英語を話せてよかったなと思ったことはたくさんあります。
今日はこの冬イギリスに行った時のお話。
英語が話せてよかったなと思った出来事です。
旅の最終日に
イギリスとフランスの旅の最終日。ホテルを出てホテルの近くの駅で、空港へ向かう電車を待っていました。
駅のホームに路線図があったので友人とこうやってここで乗り換えるといいねと話していました。
紳士が話しかけて来られました
するとhatをかぶったご年配のとても優しそうな映画に出て来そうな紳士が話しかけて来ました。
「僕はどの駅にいるのかな?」
と。
少しえ?と思ったのですが、私たちと同じ旅行されている方かなと思って、路線図を指して「この駅にいますよ」と教えてあげました。紳士は納得して、私も友人とまた話し始めました。
しばらくすると、その紳士がまた話しかけて来て「私はどこにいるのかわかりますか?』と言って来られました。
また「私たちはこの駅にいるんですよ」と路線図を見ながらお話ししましたが、ちょうど山手線や環状線のような路線図の中の駅でしたから、「どこへ行きたいのですか?』と聞くと、1つづつ、駅を指しながら、「ここは〜駅で、ここは〜駅で、ここは〜駅だからね」とお話をし始めて「ここでは〜をしたことがあるんだよ」と話し始めました。
「そうなんですね〜」とお話すると「君たちはどこから来たの?」と尋ねられたので「日本から来たんですけど今日帰るので今から空港へ向かうところなんです」とお答えしました。そこからイギリスの色んなことをしばらくお話ししていると、また「ところで私たちはどこにいるのかな?」と尋ねられました。
もしかしたら・・・・?
そこでやっとですがもしかしたら、この紳士は少し認知症があるのかもしれないと思いました。
そこで「私たちは今ここにいるんですよ。どの駅に行きたいですか?」とお聞きすると、また路線図に沿って駅名を言われるのですが、
その紳士も「どこに行くのかを忘れてしまった」とおっしゃるから「子供さんとかいらっしゃいますか?電話してみますか?」と尋ねると
「息子がいるんだよ。今から電話してみよう」と電話をかけました。
息子さんは電話に出られたらしく「どこにいるの?」と聞かれているようでしたからまた「この駅にいますよ。」とお教えしました。紳士は「私はどこへ行けばいいんだ?」と息子さんに聞いて、説明を受けているのですが、多分きっと忘れてしまうから、「紙に書きましょうか」と紙を出して、紳士に渡しました。
そうすると紳士は息子さんの言葉を聞いて「〜駅、〜駅、〜駅」と書き留め初めて、そして最終的にはこの駅だというところまで書きました。
その姿を見てなんか胸がキュッとなる感じがしました。日本でもご年配の方の人口が増えてそれが社会的な問題になっているとか、認知症で大変だとか、いろいろなことが言われているけれど、それはどこの国に住んでいてもあることで、どんな人でも成り得ることなんだと。
紳士はメモを書き終えて、息子さんとの電話を切りました。
もう一度路線図を見て「今ここだから、ここからこの駅に向かってこう行きましょうね」と息子さんから聞いた情報を書き留めたメモと照らし合わせました。
素敵なジョークを
もうすぐ電車が来ます。
紳士は私たちに「日本へ行くチケットは2枚しかないの?」と聞きました。「2枚しかないですよ。」とお答えすると「残念だな。もう一枚あったら日本まで一緒に飛んで行くのにな」って素敵な笑顔を見せてくれました。
その紳士は行きたい場所や今いるところがわからなくなってしまっても、その時たまたまあった私たちと話したことは覚えてくださっていて、おまけにそんなクスッと笑えることもおっしゃって、本当になんとも言えない嬉しいような、でも心配でもあり、いろいろな気持ちが自分の中を駆け巡りました。
英語が話せてよかったなと思いました。
あの紳士はちゃんと息子さんのところへ帰れたかな?
私たちは空港へ行くために途中で電車を乗り換えきゃいけなかったけど、紳士は別れ際にもしっかりとそのメモをにぎりしめていらっしゃいました。
またきっと誰かがどこかで助けてくれることを祈りました。
あの紳士の笑顔は一生忘れないと思います。